買ってから20年はたつだろう古い本を持っています。
「理想の自分になれる法」というタイトルで、自分の願うことを想像力を使って実現するというクリエイティブ・ビジュアライゼーションの方法について書かれた本です。
手元に置いている理由は、この本の翻訳者の書いたあとがきにあります。
翻訳家になる
翻訳者である宮崎伸治さんは、この本を読んですぐに毎日CV(クリエイティブ・ヴィジュアライゼーション)を行い、その結果、自分の夢が次々に実現し、夢であった印税生活を送るまでになったそうです。
訳者あとがきは「1日5分でもかまわないので毎日続けてください。5年たてば、奇跡が起こるはずです」という言葉で終わっています。
実際、宮崎さんの著訳書は60冊(自己啓発本の名著として有名な「7つの習慣」など)、ベストセラーも出し、年収が一千万円を超えていたこともあるそうです。
ここまでなら、夢をかなえるってすごいな、好きな仕事ができて幸せな人だなで終わるのですが。
8年前に足を洗う
本屋でふと手にした、「出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記」という本。
著者は宮崎伸治さんでした。
宮崎さんは8年前、完全に出版翻訳の仕事から足を洗ったそうです。
どうしてそんなことに至ったのかが書かれています。
一例をあげると、翻訳を依頼しながら、10カ月もかけて翻訳したものを「出版できません」とあっさり断ってくる出版社との揉め事、あげくの裁判沙汰。
そうしたことが続き、心身ともに疲れ果ててこれ以上続けられなくなったということのようです。
出版不況と言われるほど業界がもうかっていないことが原因なのか、きちんと契約書を交わさないことが悪いのか。
「本を出版することで食べていく」のは、特に翻訳出版の場合大変難しいことであるようです。
夢ってなに?
宮崎さん翻訳の本を持っていたため(しかも願望実現の本)、「出版翻訳家なんて……」を見つけたときは軽くショックでした。
しかも、現在の宮崎さんは職業欄には「警備員」と書いているそうなのも衝撃。
「夢をかなえる」って何だろうと思ってしまいます。
若いころ、宮崎さんは確かに夢をかなえたはずなのに。
夢がかなったとしても、そのあとも人生は延々と続いていく。
「夢をかなえました。そして死ぬまで幸せに暮らしました」となるほど人生は簡単なものではないということでしょうか。
こんにちは。
宮崎伸治さんについて、初めて知りました。
非常に努力家のかたなんですね。
翻訳家として日本語の文章力も磨き上げてこられて、本も読みやすくてわかりやすそうです。
機会があったら買おうと思いました。
紹介していただきありがとうございました。
hinoeさん
いつもコメントをありがとうございます。
宮崎さんは英語ばかりでなくドイツ語も堪能、イギリスの大学院も出ているそうなのです。
そんなすごい人でも翻訳の仕事を止めてしまうのは、出版そのものが儲からなくなっているからなのかもしれません。
時代の流れで変わっていくのは仕方のないことかもしれませんが、本好きとしては寂しいです。